イチロー
27歳でメジャーリーグに挑戦したイチロー。3089安打、509盗塁、10度のゴールドグラブ賞受賞などの偉業は、彼の物語の一部に過ぎない。
メジャーでプレーする以前から、イチローは日本で伝説的な存在であった。彼の野球にかける情熱は、唯一無二である。
1973年10月22日、愛知県名古屋市郊外の西春日井郡で生まれたイチローは、学生時代からその才能が注目されていたものの、身長5フィート9インチ(約180cm)、体重130ポンド(約59kg)に満たない細身の体格から、1991年の日本プロ野球ドラフトでは4位指名にとどまった。しかし、妥協を許さない努力を続けた結果、1992年にオリックス・ブルーウェーブで一軍昇格を果たし、1994年にはスター選手として頭角を現す。オリックスがポスティングシステムを通じてメジャー球団に送り出すまでに、イチローは7年連続でパシフィック・リーグ首位打者に輝いた。
交渉権を獲得したシアトル・マリナーズに3年契約で入団。2001年4月2日の開幕戦で右翼手としてデビューし、日本プロ野球からメジャーリーグに渡った初めての野手となった。デビュー直後から圧倒的なパフォーマンスを見せ、41試合中39試合でヒットを放ち、イチローはメジャーレベルでも通用するどころか、スター選手としての地位をすぐに確立した。
2001年シーズンを、242安打、56盗塁、打率.350というアメリカン・リーグトップの成績で締めくくり、ゴールドグラブ賞とシルバースラッガー賞を受賞。同年を皮切りにゴールドグラブ賞を10度、シルバースラッガー賞を3度獲得するなど、圧巻の活躍を続けた。また、ア・リーグ新人王を圧倒的な票差で獲得し、ア・リーグMVPにも輝いた。新人王とMVPのダブル受賞は、MLB史上2人目の快挙だった。
2002年から2003年にかけて、計420安打を記録した後、2004年には、MLBで長年破られていなかったジョージ・シスラーのシーズン最多安打記録(257安打)を5本上回る262安打で更新。両リーグトップの打率.372で2度目の首位打者にも輝いた。
2006年から2010年にかけては、毎年シーズン最多安打を記録。また、MLB史上初となる10年連続シーズン200安打以上を達成するなど、さらなる新記録を生み出し続けた。マリナーズでは10シーズン連続でオールスター出場とゴールドグラブ賞を獲得し、MVP投票でも9年連続で票を獲得するなど、その活躍は群を抜いていた。2007年のオールスターゲームでは、オールスター史上初のランニングホームランを含む3打数3安打の活躍で、日本人初のMVPにも選ばれた。
2004年から2012年の間、9シーズン中8シーズンも161試合以上に出場するという圧倒的な安定感を誇ったイチローは、2012年7月23日にマリナーズからニューヨーク・ヤンキースへトレードされる。40歳となった2014年シーズンまでヤンキースに在籍した後、フリーエージェントとなりマイアミ・マーリンズと契約。2016年8月7日には、メジャー通算3000安打を達成するという歴史的偉業を成し遂げた。2017年には主に控えとして136試合に出場し、2018年には再びマリナーズに復帰するが、15試合に出場後チームを離れることとなった。
2019年に東京で開催されたマリナーズ対アスレチックスの開幕シリーズでは、再びマリナーズのユニホームを身にまとい、2試合に出場。その2日間、彼の驚異的なキャリアが世界中で称賛された。
メジャー通算2653試合に出場し、打率.311、出塁率.355という成績を残したイチロー。マリナーズ入団前に日本で1278安打を記録していたことから、日米通算の安打数は驚異の4367本にのぼる。また、3000本安打と500盗塁の両方を達成した選手は、イチローを含めMLBの歴史上わずか7人しか存在しない。イチローが残した数々の記録と栄光の軌跡は、今後も語り継がれていくだろう。